足跡鑑定とは靴底が接触した際に残された痕跡を分析し、人物・行動・靴の種類などを推定・比較する法科学的手法である。足跡には2つの種類がある。
① 平面足跡(2D impression)
硬い表面(床、ガラス、紙など)に残る平面的な痕跡で、粉末、血液、インクなどによってできる
② 立体足跡(3D impression)
柔らかい表面(土、砂、雪、泥)に変形として残る痕跡であり、深さ・圧力・形状を保持する。
足跡でわかること
• 現場にいたことの証明
• 移動方向・歩行速度
• 人数の推定
• 重い物を持っていた可能性
• 歩行癖・引きずり歩行などの行動特性
• 靴のサイズ・メーカー・モデル
足跡鑑定の弱点
• 不完全(部分的・摩耗・重複)
• 天候や時間による劣化
• 無関係な第三者の足跡が混在
• 完全一致が困難な場合が多い
->単独証拠としては弱く、他証拠との併用が重要
足跡の検出・採取 (recovery methods)
① 写真撮影法
• 微細な塵や粉末でできた2D足跡に有効
• ALSで赤外線や紫外線を照射
② ESLA (Electrostatic Lifting Apparatus)
静電気式足跡採取法
• 微細な塵や粉末でできた2D足跡に有効
• 静電気でフィルムに足跡を転写
• 床・カーペット・紙などに使用
• 非破壊的
③ キャスティング法 (Casting)
三次元足跡の採取法
• 石膏、デンタルストーン、シリコーンなどを流し込む
• 土・砂・雪などの3D足跡に使用
• 深さ・形状を正確に保存可能
足跡鑑定の流れ(ラボラトリーにて)
① 記録(Documentation)
• 現場・押収靴の写真撮影(全体+拡大)
• 靴底パターン、サイズ、摩耗、損傷を記録
② 比較・識別(Comparison)
• クラス特徴
• 形状、サイズ、パターン、ブランド
• 個別特徴
• 摩耗、欠け、傷(RACs)
• 被疑者靴からテストプリントを作成して比較
③ データベースの利用
• SICAR(靴底パターン検索)
• Scene-to-Scene(事件間比較)
• National Footwear Database(人物と現場の比較)
評価(Likelihood Ratio:LR)
• H1:被疑者の靴が足跡を残した
• H2:他人の靴が足跡を残した
• LR = P(E|H1) / P(E|H2)
->どちらの仮説をどれだけ支持するかを評価
->確率ではなく「相対的な証拠の強さ」
法廷での注意点
• 足跡証拠は Type B evidence
• データベースの質・規模が重要
• R v T (2010):不十分なデータにより証拠能力が否定された
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